チャールズ・ミズラヒここ数年、私は警告してきました。脱炭素革命というものは需要がそこあるわけではなく、ただの理想論なのだと。私のポッドキャストでも、専門家が経済の実態を無視しているという警鐘を鳴らし続けてきました。しかし、政府やテレビからは電気自動車(EV)を買いなさい。巨大な電池工場を建てなさい。需要は後から来ると信じるのです。という声が聞こえていました。出所:gettyimages政府は補助金を出し、企業は従い、投資家たちは喝采を送りました。しかし、市場は理想では動きません。市場を動かすのはキャッシュフローや利益、そして人々の行動そのものです。今や理想と現実の差は明白です。フィナンシャル・タイムズは静かですが、決定的である変化を今週になって報じました。北米の電池メーカーが、EV向けの生産計画を放棄し、蓄電システムへと舵を切っています。数百万台のEV用だった工場が、データセンター向けへと作り替えられているのです。経営陣の価値観が変わったからではありません。需要そのものが変わったからです。記事によれば、電池メーカーはEV200万台分に相当する生産能力を蓄電池向けに転換しました。現在、10箇所の工場において蓄電用電池を作るために転換作業を進めています。これは単なる微調整ではなく、明確な方向転換と言えるでしょう。EVという夢物語は崩れました。・補助金が価格を下げ、・規制が普及を強制し、・消費者が従う。その連鎖は断ち切られたのです。米国の車販売に占めるEVの割合は、依然としてわずかです。成長は鈍化し、利益も減りました。資本は、いつの時代も同じように正直な反応を示しています。それは、動くべき場所へ動くこと。メーカーは工場を捨てたのではなく用途を変えているに過ぎません。ここには重要な教訓があります。問題は電池そのものではなく、それらがどこへ向かうべきか、という点にあったのです。資本が流れる先は新しい需要はEVではなく「電力の安定」となりました。人工知能(AI)用のデータセンターは途切れることのない電力を求めます。天候に左右される電力ではなく、・安定した電圧・予備電源・そしてバックアップが必要です。ここで、脱炭素のファンタジーは現実という壁にぶつかります。風力や太陽光は不安定なためです。これらを使うためには、蓄電システムが不可欠となります。出所:gettyimagesこれが蓄電池の需要が急増している原因です。なので、その需要は気候変動対策とはほとんど関係がありません。AI基盤を整えるためなのです。例えば、フォード・モーター (NYSE: F) は米国の蓄電需要に備えるために、ケンタッキー州のEV用電池工場を蓄電用へと変更しました。他社もこの動きに追随しています。ゼネラル・モーターズ (NYSE: GM)は独自の蓄電用電池の生産を公式に検討し始めました。ステランティス (NYSE: STLA)とサムスンSDI (KRX: 006400) もインディアナ州の生産ラインを、EV用から蓄電用へと転換しています。同社らは、巨大IT企業の供給元になろうとしているのです。これは当初の脱炭素の物語には含まれていなかった、極めて合理的な帰結と言えます。テスラ (Nasdaq: TSLA) も同様の動きの煽りを受けています。昨年EV収益が減少した一方で、同社の発電および蓄電事業は急成長を遂げています。結果、同事業の収益は劇的に増加しました。市場は答えを出しています。予測は軒並み下方修正。専門家はEVのシェア予測を、2030年時点で「半分」から「4分の1」へと引き下げました。資本が撤退するのも当然です。欧州の自動車メーカーたちは、理想を信じすぎた代償を、いま痛いほど支払っています。ステランティスはEV拡張に関連する巨額の損失を計上しました。出資していたバッテリー工場の持分を二束三文で売却したのです。投じられた10億ドル近い資金は事実上、消え去りましたが、これは技術革新の失敗ではありません。前提条件の誤りによる失敗です。同時に、蓄電需要は経済的な理由から高まり続けています。データセンターは米国内で急速に建設されており、電力消費は増え続けています。だからこそ、いま蓄電が重要な意味を持つことになったのです。理想ではなく現実を直視するとき私たちは、政策主導の夢物語ではなく、インフラの実需に注目しました。早い段階から、電力の安定や実需に関連する企業を中心に推奨銘柄リストを構成しています。AIやデータセンターの成長を根底で支える企業を重視し、確かなキャッシュフローに注目しています。電池製造に対する補助金があっても依然として厳しい状況です。米国製はコスト面で苦戦しています。競争は激しく、利益率は圧迫されていますが、この転換こそが何よりも意義深いのです。企業が理想を捨てて、現実の需要に向かい始めたことは、規律の回復を意味しています。AI基盤と結びついた蓄電は、生産性と成長、そして米国の技術的優位性を支えるでしょう。脱炭素革命は、犠牲のない変革を約束しましたが、市場はその前提を拒絶したのです。資本は、理想を掲げるだけでは動きません。政府が宣伝するスローガンにも興味はありません。ただ、需要があるものへと投資されます。思い込みは、いずれ経済という現実に突き当たると警告しました。私たちは今、それが現実のものとなる瞬間を目の当たりにしているのです。