偉大な企業は、
割高に見えていた株価を
一気に割安に変えることがあります。
ニック・スリープ氏は、ウォール街では
あまり知られていないかもしれません。
しかし、長期投資家は
同氏の投資手法を学ぶべきでしょう。
理由は単純です。
同氏は、2001年から2014年までに
約921%の利益を上げました。
これは、同じ期間における
「MSCIワールド・インデックス」*の
117%という成果を大きく上回るものです。
※MSCIが算出している株価指数
これは驚異的な記録と言えるでしょう。
しかもその期間は、ドットコムバブルの崩壊や
2008年の金融危機が含まれているのです。
そんな同氏が2009年、
ウォルマート (NYSE: WMT)に関する
重要な指摘を行いました。
同氏は、同社がまだ初期段階にあった
1972年を振り返ります。
そして、もし当時の同社に投資する場合、
いくらまでなら投資することができたかを
問いかけたのです。
その答えは驚くべきものでした。
同氏の試算によると、なんと当時の株価の150倍を
支払うことも可能だったのです。

出所:Trading View
(1972年1月1日〜2009年12月31日の株価騰落率)
それは、株価収益率(PER)*が1,500倍を
超えることを意味します。
*株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示す指標
そして、そのような常軌を逸した株価で
投資をしていても、年率10%の利益を
得ることができたと言うのです。
だからといって、価格がどうでもいい
ということではありません。
価格は常に重要となります。
しかし、同氏の伝えたかったのは、
さらに重要なことでした。
ここに、本当の投資の教訓があります。
多くの投資家は、企業評価を
単純なものだと考えがちです。
PERなどの倍率が低ければ割安、
高ければ割高というものです。
それは一見、正しいように思えますが、
それでは不完全です。
最高の企業というのは、単純な公式に収まる
ものではないのです。
本当に最高の企業は複利で成長していきます。
それが、同社から得られる教訓でした。
同社はただ店舗を増やしたわけではありません。
節約、規模、物流、顧客第一の文化を
築き上げたのです。
①節約されたすべての資金が顧客に還元され
②低価格がさらに多くの顧客を
同社の店舗へと引き寄せ
③顧客が増えることで全体の取扱量が増加
④取扱量が増えれば再び、
価格を引き下げることとなったのです。
この好循環は、同社が成長するにつれて
どんどん強くなりました。
価格だけを見ていた投資家は、
このビジネスの仕組みを見落としたのです。
これは非常に高くつく過ちです。
大恐慌後に現代経済学の基礎を築いた
経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏は、
かつて次のように述べました。
「大まかに正しいことは、
完全に間違っていることに勝る」

出所:Unknown(1929)/ PD
この考え方は、同社に完璧に当てはまります。
同社を割高だと拒絶した投資家は
完全に間違っていました。
一方で、ビジネスを理解していた投資家は、
大まかに正しかったのです。
この違いが、大きな資産を生み出しました。
10年や20年という歳月の中で、
わずかな評価の間違いは消え去ることがあります。
だからこそ、偉大な企業であれば、
高い価格が致命傷になるわけではないのです。
本当に恐ろしいのは、「偉大な企業を見過ごす」
という完全な間違いを犯し、
平凡な企業を買ってしまうことなのです。
数字は何が起きたかを教えてくれます。
しかし、なぜそれが起きたのかを
教えてくれるわけではありません。
売上高や利益率、利益、そして評価額も重要ですが、
さらに重要なことがあります。
それは、
どのような力がその結果を生み出し続けているか
ということです。
そこで偉大な企業と平凡な企業との差が
生まれるのでしょう。
同社の場合、その原動力となったのは
「文化」でした。
同社には、何よりも顧客を第一に考える
節約志向があったのです。
それは単なるスローガンではありませんでした。
組織全体の行動を形作り、価格設定、物流、店舗、
賃金を導いたのです。
その文化のおかげで、同社は何度も顧客に
還元することができたのです。
ウォール街はしばしば、
このような強みを理解するのに苦労します。
次の四半期の利益率を計算する方が簡単だからです。
何十年にもわたって複利で成長する文化を
評価するのは困難でしょう。
彼らは目に見える数字を重視しすぎて、
目に見えないものを軽視してしまうのです。
しかし、優れた投資家は逆のことを行います。
何が本当に複利の成長を促しているのかを
問いかけるのです。
この教訓は、私たちの手法に直接
結びついています。
私たちは、統計的に割安な銘柄だけを
探しているわけではありません。
✔︎耐久性のある強みと実績のある需要
✔︎資本を賢明に配分する経営陣
✔︎息の長い成長の余地と強固な顧客関係
✔︎ストーリーを裏付ける数字
を求めています。
これが私たちの「4アルファアプローチ」の
核心です。

同社から学ぶ教訓は、どんな価格でも
買っていいということではありません。
本当の教訓は、稀に見る偉大さが現れたときに
それを見抜くことにあります。
ビジネスに強力な原動力があれば、
時間は味方になってくれるでしょう。
だからこそ、私たちは規律を保ち続けるのです。
流行を追いかけることはいたしません。
安さを崇拝することもないのです。
私たちは、次の四半期よりも次の10年が
重要となる企業を探しています。
市場は何年もの間、偉大さを見落とすことが
あるかもしれません。
しかし忍耐強い投資家は、
他人が見落としているものを理解することで
利益を得ることができるのです。
富はそこで築かれます。
それは今でも、投資における最も価値のある
教訓の一つであり続けています。