チャールズ・ミズラヒプライベート・エクイティ*やプライベート・クレジット*は長年、「賢い選択肢」として売り込まれてきました。※非上場企業の株式や非公開の融資など証券取引所を介さない私的な市場で行われる投資・融資の総称・より高い利回り・より低いボラティリティ・一般の投資家には手の届かない案件一見、何か特別な商品のように見えますし、秘密の利益があるようにも聞こえます。もしかしたら、非公開市場に足を踏み入れれば、簡単に儲けられるように感じられたかもしれません。しかし、どのような市場にも特別なことなどありません。出所:Bloomberg今週、ブルー・オウル・キャピタル社が非公開企業を対象としたファンドで解約(資産の現金化)を永久停止しました。そして、個人投資家がこうしたファンドから急いで資金を引き揚げているという報道が目につきます。ロバート・A・スタンジャー社のデータによると、非公開取引型の投資商品への申し込みは1月に40%も減少したようです。これは、決して小さな数字ではありません。そもそも、プライベート・エクイティとプライベート・クレジットへの投資は、一つの約束の上に成り立っていました。「日々の価格変動を伴わない、安定したリターン」です。その代わり、引き換えとなる条件はシンプルでした。流動性を手放すこと。それによって、投資家はより価格変動の少ない"なめらか"な運用報告を受け取れるようになるのです。しかし、なめらかな成績は、安全とは意味が異なります。事実、投資家はファンドに自らの資金の引き出しを求めて、「それはできない」と告げられたとき初めて現実に気づくのです。幻想が薄れ、リスクが姿を現します。これは、いつか必ず起きることでした。プライベート・エクイティはゼロ金利時代の10年間で特に流行しました。資本はあふれ、借り入れは潤沢で、価格は値上がりし続けたのです。そのため、ファンドは・よりレバレッジを加え、・より低い金利で借り換えを行い・より高い価格で売却するこれを繰り返すことができました。確かに、過去の環境では機能したかもしれません。しかし、その環境に依存していたのです。やがて、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げると、計算が変わりました。・借入コストは上昇し・出口の価格は低下し・市場の一部でデフォルトがじわじわと増加を開始「低リスクで高い収入」という素晴らしい約束は、突然、幻想と化したのです。インフローが止まれば、ゲートが閉まる・ブラックストーン・アポロ・グローバル・マネジメント・アレス・マネジメント・ブラックロックといった大手各社は、セミ・リキッド型ファンド*を中心に、個人投資家向けの巨大な販売網を構築しました。※流動性の低い資産を組み込みつつ、四半期ごとなど一定期間に限定的な換金機会を提供する投資信託当時投資家には、四半期ごとに最大5%の資産を売却できると説明されていました。しかし、この仕組みが機能するのは、資金の流入が流出を上回る間だけです。新規資金が減速し、解約請求が増加すると、「ゲート」が現れます。つまり、ファンドが投資家のお金の引き出しを制限、あるいは一時的に封鎖するのです。出所:gettyimages2022年にブラックストーン社がBREITと呼ばれるファンドの売却を制限したとき、私たちはその一端を目撃しました。幸いその時は、ファンドは生き残り、リターンもその後回復しました。しかし、投資家の間では空気一転。「いつでも自分のお金を取り戻せる」という考えが、甘いことに気づいたのです。流動性は、本当は投資家を守る盾なのです。プライベート・エクイティ・ファンドは多くの場合、四半期ごとに評価額を算出します。日々の市場価格は存在しません。これが安定性の「見せかけ」を生み出すのでしょう。しかし、その裏にある企業は、常に上場企業と同じ経済的な影響を受けています。金利上昇も、成長の鈍化も市況の悪化も全て企業にダメージを与えます。一方、上場企業との違いは、公開市場では即座に再評価が行われるのに対し、非公開市場では緩やかにしか行われないという点です。これは先送りにして、リスクを隠しているだけでしょう。そして、もう一つ問題があります。プライベート・エクイティの運用者は、ファンドの加入金額に対して報酬を得るのです。また、報告上の利益に対して報酬を得ます。より多くの資金を集め、より多くの資金を運用し、必要なら運用期間を延長する。ただ、それを繰り返すだけです。このモデルが悪いわけじゃありません。多くの優秀な運用者が立派な会社を築いてきました。しかし、私達とは相容れないでしょう。なぜなら、私たちのアプローチはシンプルだからです。・優れた米国企業を保有する・追い風に着目する・経営陣を研究する・強固な財務状況を求める・価格を尊重する私たちはレバレッジに頼ってリターンを作り出しません。金融工学にも依存しません。また、ボラティリティから目を背け、自分たちの資本へのアクセスを手放したりはしません。変動はあっても、より高いリターンを迷わず選ぶべきです。米国は世界で最もダイナミックな経済大国であり続けています。イノベーションが育まれ、資本が集まり、法の支配が投資家を守っているのです。その成長に参加するのに、複雑な仕組みは必要ありません。長期的な公開市場の歴史を振り返ってみてください。持続的な競争優位性を持つ優良企業は、何十年にもわたって資産を複利で増やし続けてきました。たとえ、戦争、景気後退、金利サイクル、政治の変動があっても、それを乗り越え、適応してきたものです。プライベート・エクイティはしばしば、レバレッジによって成果を加速させようとします。この方法は楽観的な市場では機能しますが、一旦市場が引き締まると、崩れ出すでしょう。現在の資金調達の鈍化は一時的なニュースではなくいわば、ストレス・テスト。流出が流入を上回れば、運用者は資産を売却するか、解約を制限するしかありません。いずれの結果も、個人投資家に都合の良い結果をもたらすものではないでしょう。市場が下落すれば、哲学は姿を表し市場が上昇すれば、強さが証明されます。私たちの投資哲学は透明性と強さの上に築かれているのです。ゲートも、密室で決定される四半期評価もありません。あるのは、所有権、規律、そして流動性です。プライベート・エクイティは悪ではありませんし、愚かでもありません。ただ、私たちの哲学に合わないというだけです。私たちは仕組みではなく、ビジネスの価値を信じます。複雑さではなく、キャッシュフローを信じます。かつてない資産形成のエンジンとして、米国の公開市場を信じているのです。流動性が消えたとき、現実が姿を現します。そして現実が現れたとき、本質的な強さが常に勝利を引き寄せるのです。