イーロンマスク氏のスペースXは、近年で最も注目を集めるIPO*になるかもしれません。※新規株式公開同社は✔️宇宙船の打ち上げコストを一変させ✔️スターリンクを巨大な衛星インターネット事業へと育て上げ✔️再利用可能なロケットを現実のものにしました。多くの投資家が興奮するのも無理はありません。・宇宙・人工知能(AI)・世界規模のインターネット同社は、この三つの巨大なテーマの中心に位置しているのです。そして、同社はナスダックへの上場を目指しており、6月12日に取引を開始する見通しです。・調達額は約750億ドル・企業評価額は1兆7,500億ドル程度になると見られ、実現すれば史上最大のIPOとなります。しかし、偉大な企業のストーリーが必ずしも偉大な投資になるとは限りません。もちろん、私たちは同社が成し遂げたことを深く尊敬しています。しかし、同社への尊敬と投資戦略とは別なのです。確かに同社は驚異的な企業かもしれません。だからといって、「どんな価格でも買うべき株」という風にはなりません。私たちが距離を置く理由を、3つ挙げましょう。理由① 業績と値段のバランス同社の開示資料によれば、・昨年の売上高187億ドル・損失は49億ドルに上りました。さらに2026年は第1四半期だけで、43億ドルの損失を計上しています。これは、私たちが求める財務的な数字とは、大きく異なります。特に、今の同社に1兆7,500億ドルという値段を株式市場がつけるということは「何年にもわたる完璧な業績」に対して投資家がお金を支払うということです。もしも、・打ち上げの失敗・規制上の障壁・スターリンクの成長鈍化・予定外の支出これらのうちたった一つでも発生すれば、市場の期待は一転。大きな不安に変る可能性があります。そしてこんな投資に「安全域*」はありません。※適性価格以下の値段の株。バフェットの言葉最早、根拠のない盲信とも言えます。私たちの4アルファアプローチは、盤石な財務を持つ企業に投資することが基本です。・明確な収益力・安定したキャッシュフロー・規律ある資本配分を持つ企業を求めています。同社はいつか優れた上場企業になるかもしれません。しかし今のIPO価格は、すでに「将来の偉大さ」を織り込みすぎています。将来の夢の対価を、今から支払う必要はないのです。理由② 投資家の発言権がない同社のCEOイーロン・マスク氏は同社の議決権の85%を保持します。出所:Gage Skidmore (2025), CC BY-SA 4.0よって、同社の株を購入したとしても一般投資家には、経営への影響力がほとんど与えられません。これは重要な事実です。株を買うということは、その企業のオーナーになることを意味します。しかしオーナーには、本来権利が伴うべきです。今の同社の構造では、一般投資家は株を持ったとしても、経営を動かす力は持てません。宇宙への夢は買うことはできても、ハンドルを握ることができないのです。それも、同社の株価が適正な価格であれば、受け入れられるかもしれません。しかし1兆7,500億ドルという高すぎる評価額では、その条件を飲むことはできないでしょう。優れたリーダーシップは確かに重要です。しかし、優れたガバナンスもまた、同じくらい重要なのです。私たちは、株主と利益が一致した経営陣を求めています。説明責任を求め、投資家がパートナーとして扱われることを望んでいます。同社の今の構造は、理想の姿とはかけ離れているように見えます。理由③ IPOはインサイダーに有利これは、ウォール街がめったに口にしない話です。そもそも、IPOは一般投資家の為に設計されていません。流動性を生み出すために設計されているのです。IPOとは・創業者・ベンチャーキャピタル・初期社員・大手ファンドが株をお金に変える場を確保するための仕組みです。個人投資家が参入できるのは、たいてい最良の価格がすでに決定された後のことです。米国証券取引委員会(SEC)によれば、IPOの配分を管理するのは引受会社と発行体です。人気のIPO株は・優遇された顧客・富裕層の投資家・機関投資家へと優先的に割り当てられる傾向があります。一般の投資家が参加できるのは、取引開始後になることが多いのです。これは公平な競争環境とは言えません。一般投資家が熱狂し始めた頃には、ウォール街のプロはすでに利益を確定していることが多いのです。私はウォール街での40年間で、身をもって学んだことがあります。ウォール街が熱心に売りたがっているものを買って報われることはない。なぜなら、・株の売り手がタイミングを選び・金融機関が宣伝文句のストーリーを作り・大衆が熱狂するそんなところに「お買い得」なものがあるわけがないのです。バフェット氏とマンガー氏がIPOを避け続けた理由ウォーレン・バフェット氏とチャーリー・マンガー氏は、この構造的な問題をよく理解していました。出所:Mark Hirschey(2005)/ CC BY-SA 2.0出所:Nick (2010)/ CC BY 2.0両氏は決してIPOを追いかけることでバークシャー・ハサウェイ(NYSE: BRK)を築いたわけではありません。価格が理にかなっているときに、実績ある企業の株を買い続けたのです。バフェット氏は2019年、「ウーバー・テクノロジーズ (NYSE: UBER)のIPOは買わない。これまでIPOを一度も買ったことがない。」とも述べています。この言葉は、同氏がIPOという場の「構造」をどう見ているかを雄弁に物語っています。・売り手がタイミングを選び・金融機関が宣伝文句のストーリーを作り・大衆が熱狂するこれは、賢明な投資家が求めているものとは正反対です。マンガー氏は「投資の成功とは支払う価格よりも価値のあるものを買うことだ」と語っています。IPOは通常、売り手が可能限り高い価格を引き出そうとするところから始まります。それは私たちが追いかけるものではありません。アルファ投資家としての基準スペースXには偉大な成長ストーリーがあります。しかしそれは、今日の優れた投資と同義ではありません。私たちはニュースの見出しを追いかけません。アルファ・インベスターの推奨銘柄リストには、長期的な複利成長を目指して厳選された、優良企業がすでに揃っています。・盤石な財務・真のキャッシュフロー・メガトレンドから恩恵を受ける企業たちです。私たちが探すのは、・強力な追い風、・卓越したリーダーシップ・健全な財務・合理的な価格です。同社は最初の2つを備えているかもしれません。しかし、残りの2つは、まだ満たしていないと考えます。4アルファアプローチに、IPO熱狂が入り込む余地はありません。私たちが求めるのは、✔️熱狂ではなく証拠です。✔️将来の約束ではなく、現在のキャッシュフローです。✔️雰囲気に流された取引ではなく規律です。米国は宇宙、テクノロジー、イノベーションの分野で発展し続けるでしょう。しかし、私たちの使命は刺激的な成長ストーリー全てを買うことではありません。株式市場が適正な価格を提示した時だけ、優れた企業を買う。それが私たちの仕事です。同社は引き続き注目に値します。しかしIPOの今この瞬間に買う価値があるとは、私たちには思えません。