韓国市場は最近、投資家に対して
信用取引の恐ろしさを思い出させました。

出所:Bloomberg
同国の株式市場は、世界で最も
注目を集める相場のひとつです。
人工知能(AI)への期待から半導体株が
急騰し、個人投資家も次々と参入しました。
その期待から、
韓国株は2025年に75%上昇。
個人投資家が今年最大の
買い手となったのです。
彼らは
✔️資金を借り入れるか
✔️レバレッジ型ファンド
を購入しました。
当初、この戦略は上手くいっている
ように見えました。
レバレッジは、上昇相場では
無害に見えるものです。
株価の上昇はより大きな利益を
生み、その利益がさらなる借入を
呼び込みました。
そうして、一部の人気銘柄へと
資金が集中していったのです。
しかし、その「危険性」は価格が下落した
ときに姿を現します。
韓国のKOSPI指数はわずか1日で
約11%も急落し、
翌日にはさらに大きく下落。
この売りにより、わずか1カ月で、
市場から約2兆ドルが失われました。
多くのレバレッジ投資家は、
追証*や強制決済に直面したのです。
※追加で担保(証拠金)の差入れが必要となった状況
韓国の代表的な
メモリー半導体メーカー
『SKハイニックス』に
連動するレバレッジ型ファンドでは、
被害はさらに深刻でした。
同社株が急反落したことで、
一部のファンドはわずか1週間で
30%近い損失を被りました。
企業そのものが消えた
わけではありません。
ましてや、AIの需要が
一夜にして消えたわけでもないでしょう。
レバレッジが、ごく普通の株価調整を
大惨事へと変えてしまったのです。
これは韓国の個人投資家だけの
話ではありませんでした。
米国でAI界の若き天才と目される
レオポルド・アッシェンブレナー氏が率いる
「シチュエーショナル・アウェアネス」。
同氏は2024年、AIが社会をどう変えうるかを
論じたエッセイを発表し、
大きな注目を集めました。

出所:同社HP
同氏はAI関連株に集中投資を行い、
年初から6月末までに439%の
運用成績を上げたと報じられています。
その実績と評判は、大きな
注目を集めました。
しかし、どれほど未来を
正しく予測しても、
過度なレバレッジは身を滅ぼします。
同社は約160億ドル規模の公開株を
運用しており、
その規模を借入によって拡大していました。
その後、テクノロジー株が
急激に反転。
同ファンドは大きな損失を被り、
投資家に追加の資金拠出を
求める事態となりました。
そして、保有する公開株の
相当部分を売却するための、
緊急の交渉を開始したのです。
7月30日、最終的にシタデルが
160億ドル規模の持ち株の大部分を
買い取ることで合意。
この取引は、急激な損失によって
生じた売却圧力の中、わずか
約24時間で成立しました。
シチュエーショナル・アウェアネスは、
AIの将来性への確信があったかもしれません。
しかし、極度のレバレッジは、
いつ株を手放すかという判断を、
投資家から奪います。
忍耐が実を結ぶ前に、売却を
強いられてしまうことがあるのです。
これこそが、レバレッジの
隠れた危険性です。
チャーリー・マンガー氏は、
印象深い警句を残しています。
賢い人間が破産する道は3つしかない。
・酒(Liquor)
・女性(Ladies)
・そしてレバレッジ(Leverage)だ

出所:Nick (2010)/ CC BY 2.0
バフェット氏は後に、マンガー氏
が最初の2つを付け加えたのは、
頭文字が同じ「L」だからだと
冗談を言いました。
両氏が言う本当の危険は、レバレッジ
にあったのです。
レバレッジとは、借入金を
使って投資額を増やすことを
意味します。
例えば、ある投資家が10万ドルを持ち、
さらに10万ドルを借り入れる。
すると、合計20万ドル分
の株式を買うことができます。
そして、20%の上昇があれば、
約4万ドルの利益が生まれます。
つまり、元手に対しては40%の
利益となるわけです。
これが、レバレッジの魅力
なのかもしれません。
しかし反対に、
20%の下落は4万ドルの損失を生みます。
投資家は、元手の40%を
失うことになるのです。
50%の下落があれば、元手の
10万ドルすべてが失われる
こともあるでしょう。
これこそ、投資家が見落としがちな
危険なのです。
株価が下落すると、証券会社は
追加の担保を要求してきます。
投資家がそれに応じられなければ、
証券会社は下落している株を強制決済します。
つまり、最悪のタイミングで
主導権を失うのです。
待っていれば回復したかもしれない
損失を、そこで確定させてしまうのです。
韓国の事例は、この連鎖が
いかに早く広がるかを示しました。
①株価の下落が追証を引き起こし
②追証が強制売却を招き
③強制売却がさらなる株価下落を生む
これを繰り返したのです。
投資とは、経済的な人生を豊かにするもの
であり、
築いてきたすべてを失うものではありません。
ゆっくりと豊かになれば良いのです。
実際、富の多くは、
こうして静かに築かれていきます。
優良企業は
・売上を伸ばし
・利益を増やし
・キャッシュフローを生み
・それを再投資
します。
株主は、この過程が何年もかけて
複利で積み上がっていくのを見守るのです。
一見、地味に感じられるかもしれません。
しかし、その方がはるかに信頼できる道です。
投資家は時として、借入金があれば
目標により早くたどり着けると考えて
しまいます。
上昇の恩恵だけを思い描き、
下落が訪れる前に逃げ切れると
考えてしまうのです。
しかし、市場が事前に警告を
伝えてくれることはありません。
・決算の意外な発表
・経済への懸念
・政治的な動き
・投資家心理の変化
が、急激な下落を
招くこともあります。
そうした局面で、レバレッジは
一時的な変動を、取り返しの
つかない損失へと変えて
しまうのです。
特に、退職を間近に控えたみなさまと
そのご家族には、このことを
理解していただきたいと思います。
すでに何十年もかけて働き、
貯蓄し、資産を築いてこられた
はずです。
より速い利益のために、その
土台を危険にさらす理由は
どこにもないでしょう。
ウォーレン・バフェット氏は
かつて、
「今は手元に無く必要でもないものを
追い求めて、
すでに手元にあり必要なもの
を危険にさらしてはならない」
と
警告しました。
教訓はシンプルです。
レバレッジを避け、複利に
働く時間を与えること。
ゆっくりと豊かになることに、
何の問題もありません。
ゲームに留まり続けることこそが、
資産を育てていく道なのです。